遊風の養生日記Ⅱ

術伝流の愉癒庵遊風(颶風颯雷電)が、鍼灸操体食養はじめ養生について書いていきます

『杉山真伝流臨床指南』感想2

『杉山真伝流臨床指南』感想続き

 今日は少し辛口に。
 良い本なのだが、残念なのは、「臨床指南」というわりには、真伝流のいろいろな技を現代の方のどういう状態のときに施術して、どういう成果を上げたかという記述が少ないこと。深谷伊三郎先生の『名家灸選釈義』くらいとはいわないまでも、せめて横田観風先生の『鍼道発秘講義』くらいあると良かったなと思った。
 また、ある技術を適応すべき体の状態、刺鍼しているところ(ツボ)の筋肉や皮膚の状態、呼吸や瞬きなど刺鍼中の体の状態についての記述も同じように深谷先生や横田先生に比べると少ない感じがした。患者さんの体に施術する技術も大事だが、それ以上に患者さんのそのときの体の状態にぴったり合った技術を選ぶほうがより大切だと思っているので、そのあたり残念な気がした。
 まぁ、昔から大浦さんは、昔の文献を翻訳するのは熱心だけど、それを現在の臨床の場で使った結果どうだったかや、それらを積み上げて、現在の時点で身に付けるべき腹診はじめ診察の体系やそれに合わせた施術の体系を提示していくことには、あまり熱心ではなかったように思います。
 『長沙腹診考』の翻訳をお手伝いしたときもそういう感じがして見ていました。横田先生にもそういう傾向があるように感じました。まぁ、一人の方にすべてを望むのは無理なので、それは別の方の役割なのかもしれない。
 私は、どちらかというと、深谷先生や操体橋本敬三先生のように、現在の方に応用したらどうだったかのほうに関心があるし、現在の時点で身に付けるべき腹診はじめ診察の体系やそれに合わせた施術の体系を提示していくことに興味がある。
 そして、その結果を踏まえて、これから21世紀の鍼灸界を担うであろう若い方々に、現在やこれからの時代の臨床の場でコンスタントに6割り以上の方々に喜んでいただける診察と施術の技術体系を伝え残していきたいし、それを伝え残すための伝承体系、研修体系も作っていきたいと思っています。横田先生の本や大浦先生の本は、その素材として、私なりにせいいっぱい活用させていただこうと思います。
 21世紀の和方鍼灸が未来の世界で世界中から参照されるようになることを夢見ながら。
 そして、鍼を動かす技術というのは、結局、
1.左右に捻転する  (撚鍼、回旋術、押し手でまわす円鍼術など)
2.左右に横に振り戻す(横揺らし、彈鍼、弓なりに反らす、反らしながら揺らすなど)
3.上下に移動させる (単純に刺す抜く、雀啄、押し手を細かく叩くなど)
の3つに大別できて、それを
1.変化の大きさ(どのくらい変化させるか、どのくらい戻すかの組み合わせ)
2.動かす速さ(変化させる速さ、戻す速さの組み合わせ)
をどう変えて、目の前の患者さんのそのときの状態に合わせていけるか
なんじゃないかなと思った。
 そして、基本的には、刺激が弱いほうが補で、刺激が強いほうが瀉ということ。
 2010.09.03追記:このごろ思うのは、ゆっくり大きめに動かすと補になりやすく、素早く細かく動かすと瀉になりやすいということ。