遊風の養生日記Ⅱ

術伝流の愉癒庵遊風(颶風颯雷電)が、鍼灸操体食養はじめ養生について書いていきます

『めざせ!外来診療の達人』2

 カルテ(症例)の続き,テストなど。
 操体をまとめた医師橋本敬三先生は、「操体鍼灸はじめ東洋物療は機能性疾患までには有効だが、急性の器質性疾患は西洋医学の分野」ということに、私は、基本的に、そのとおりだと思っている。初めての患者さん、とくに急性症状をかかえている方について、注意すべきは器質性疾患の疑いはないかということ。その点で、この本はじめ生坂先生の本は、とても勉強になる。

  1. カルテ(症例)
    1. 「櫛を入れられない」「枕に当たると痛い」は、側頭動脈炎の圧痛を示唆
      1. 側頭動脈炎の頭痛は急性期を過ぎると自然軽快することもある
      2. 側頭動脈炎の症状として有名な側頭動脈の圧痛が見られるのは、1/3以下
      3. 疾患を想起しないと、相当動脈拍動の減弱、消失、索状物触知などの軽微な身体所見は見逃されやすい
    2. 意識障害をともなわない痙攣発作であるテンカンの部分発作は、症状が多彩で、意識しないと見過ごされやすい
      1. 意識障害がない分、ジャクソニアンマーチやトッド麻痺は病歴聴取しやすい
      2. ジャクソニアンマーチ:大脳皮質運動野に焦点を有する運動発作で、焦点部位対側の手指、顔面、下肢に間代性clonicの痙攣がひろがっていく。発作後に、患側肢に一過性の運動麻痺が生じる場合がある(トッド麻痺)
      3. 部分発作は、頭蓋内器質病変を示唆するので、精査が必要
    3. 咽頭所見のない咽頭痛のまれな疾患に「縦隔気腫」がある
      1. 縦隔気腫には、気道内圧上昇を示唆する病歴が明らかでない例もある
      2. 縦隔気腫の身体診察では、皮下気腫を合併した場合に頚部の触診でわかる握雪感をチェック
    4. 微熱が続いて首や肩が痛い+頚動脈にそう圧痛なら、高安動脈炎(大動脈炎症症候群)
      1. 血管炎では、血管分布に沿った局所痛があることもある
    5. 著明な血圧上昇+頻脈は、カテコラミンラッシュを示唆、褐色細胞腫や薬物中毒も
      1. 褐色細胞腫では、循環血漿量は減少しているため、起立性低血圧や、みかけの赤血球増多などをともなうことも
    6. 難治性下腿潰瘍の鑑別には、血管炎や抗リン脂質抗体症候群をくわえておく、抗リン脂質抗体症候群をしばしば合併するSLEの部分症状のこともある
    7. ソーセイジ様指をみたら、関節よりも軟部組織の腫脹を考える、対称性・びまん性なら強皮症や混合性結合組織病(MCTD)を考え、少指・非対称なら乾癬性関節炎や凍瘡などを鑑別
      1. 関節炎の鑑別には、多関節(poly)、消関節(oligo)、単関節(mono)があり、oligoなら乾癬性関節炎、早期関節リウマチのほか、ライター症候群などのHLA-B27関連関節炎を考える
    8. 群発性頭痛の発作周期には患者ごとにcircadian rythmがあるので、発作出現の時間を予測できることがある
      1. 規則正しい生活をしている方だと「食後1時間後の頭痛」という病歴聴取もありえる。患者の解釈モデルの把握は常用であるが、プロとしての医学モデルの構築を忘れてはならない
    9. たとえ掻爬後であっても、超音波検査での子宮内胎嚢、または、掻爬内容に絨毛が確認されたことが明らかでなければ、子宮外妊娠は否定出来ない
      1. 早朝胃痛で覚醒激痛のため救急搬送+受診一ヵ月半前流産で掻爬術・1ヶ月後に生理が、子宮外妊娠だった例
    10. 嘔吐・食欲不振の患者は、ATCH分泌不全も
      1. 原発性副腎機能不全とは異なり、ACTH分泌不全では、一般に低血圧や高カリウム血症は来さない
      2. 食事がとれず意味不明の言動も見られてきた嘔吐・食欲不振の78歳男性の例
  2. テスト
    1. neck flexion test:まっすぐの座位で、口を閉じたまま顔を下に向けてもらい、ラクに顎が前胸部につくかどうか、髄膜刺激症状の有無,臥位で項部硬直を見るよりも感度が高い
    2. Romberg test:足をそろえ腕を横(体?)につけて立ってもらい、それから目を閉じて数秒間立ってもらう、目を閉じて動揺したらRomberg徴候陽性、倒れないように患者さんの近くに立ってする
    3. Carnett徴候:腹痛の原因が、腹壁(筋肉、骨、神経)にあるか、腹腔内にあるかを判断する、患者は仰臥位で腕をクロスさせて胸に置き、最強圧痛点を同じ力で圧迫し続け、頭と肩がわずかに浮く程度に挙上してもらい、圧痛減弱なら腹腔内臓器の疼痛を示唆
  3. 痛みのOPQRST
    1. Onset:発症様式
    2. Provocation/palliative facter:憎悪/寛解因子
    3. Quality:症状
    4. Region/Radiation/Related symptoms:部位/放散/関連症状
    5. Severity:強さ
    6. Temporai characteristics:経時的変化(日内変動をふくむ)