遊風の養生日記Ⅱ

術伝流の愉癒庵遊風(颶風颯雷電)が、鍼灸操体食養はじめ養生について書いていきます

『見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール』

見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール (Meet the Master Clinician)

見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール (Meet the Master Clinician)

 病歴と診察で9割以上というウワサの生坂先生の本。評判通りのおもしろさ。

  1. 見逃しの原因
    1. 病歴から疾患を想起できなかった(55%)
    2. 疾患そのものを知らなかった(35%)
    3. 身体診察が不十分(8%)
    4. 病歴や身体所見の特定に情報にとらわれた(2%)
  2. 外来診療で見逃しを防ぐための7か条
    1. 日常病を知る(カゼ症候群、胃腸炎をたくさん見ておけば、類似の重篤疾患には、何か違うという勘が働くものである)
    2. 心因性疾患に強くなる(器質性疾患でなく検査が正常だから心因性だろうという思考は危険)
    3. 病歴聴取で疾患を予想する(カギになる情報をいかに選択するかが重要)
    4. マンネリ化を防ぐ(微妙な違いを楽しむ、カゼと言ってもいくつもの病型が存在)
    5. 逆転移に敏感になる(逆転移:治療者が患者に抱く感情。早期に感じとり、ニュートラルに持っていく必要がある)
    6. 過労を避ける(一定量の睡眠を確保)
    7. 見逃し症例の検討会をおこなう(まず小グループで)
  3. 日常診療のピットフォール(落とし穴)(抜粋)
    1. カゼのあと頭痛が残れば副鼻腔
    2. あぶないぞ”増発””最悪””突発”は
    3. BPPV頭を振れば発作出る(BPPV:良性発作性頭位眩暈症)
    4. 発熱と腹痛だったら喉を見ろ(溶連菌性咽頭炎、小児では咽頭痛は必発でない)
    5. 長い咳鼻漏・喘息・逆流か(鼻漏:鼻炎か副鼻腔炎逆流性食道炎
    6. 痛いとこ脱がしてみれば皮疹かな(デルマトームに沿っていたら帯状疱疹の可能性が高い)
    7. 隠し酒MCVが教えてる(MCV:平均赤血球容積)
    8. 現代の持病の癪はクラミジア(昔は胆石発作)
    9. 腹痛の鑑別落とすな虫垂炎(腹部に手術痕のない患者場合はとくに、心窩部痛でも可能性)
    10. 老人の腹痛そけいを見落とすな(大腿ヘルニア嵌頓)
    11. 腹痛の子供を見たら便に聞け(排便があると言っても便秘の可能性がある)
    12. 突き上げるお尻の痛みに名前あり(一過性直腸痛)
    13. 高齢者近位筋の痛みはリューマチか(リウマチ性多発筋痛症(PMR)、鑑別は、線維筋痛症、関節リウマチなど)
    14. 高熱の幼児を見たら尿検査(2歳未満の発熱の5%は尿路感染症
    15. 中年の単核球はメガロかな(伝染性単核球症は長びく発熱の原因の一つ、10代から20代前半のはEBウイルスによるものが多く、サイトメガロウイルスによるものはそれより高年齢)
    16. パニックは次の発作が怖いのよ(予期不安がないときは、褐色細胞腫の可能性もあり)
    17. パーキンソンふるえで来るとは限りません(初期症状:片側の腕が重い、体のキレが悪くなった、声に張りがなくなったとかもある)