『治療をためらうあなたは案外正しい』
- 作者: 名郷直樹
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2008/10/23
- メディア: 単行本
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おもしろかった点は、以下。「ただ何もせずに様子を見ていても案外大丈夫なことが多い」ということらしく、「エビデンスを見ると、放っておいてもどれほど大丈夫なのかということのほうが、参考になることが多い」「病歴と診察が大事で、めったやたらに検査してもらわないことも重要」とか。
- 高血圧:副作用の含めて見るためには、不整脈が減っただけでなく、死亡全体が減ったか比べる必要がある。血圧の薬を飲まなくても脳卒中にならない人のほうがずっと多い。70歳の高血圧の人はなんて元気だろういうのは正しい解釈かもしれません。
- コレステロール:飲むか飲まないかで迷うのは、どっちでも良いから。飲むか飲まないかをあわてて結論を出す必要はない。日本人は病気になりにくく元気というのが、この研究から読み取るべきことなんじゃないか。
- 糖尿病:肥満糖尿病患者に対して、メトフォルミンを除いて、インスリンや経口糖尿病薬の集中治療の効果は明らかになっていない。治療の容易さと効果から言って、血圧治療は血糖治療以上に重要。よく勉強すると混乱する・・・これは、EBMから得た最大の教訓の一つ。
- かぜ:カゼに似たカゼでない恐ろしい病気を見逃さないことが重要。カゼ薬は、その場の症状を抑えるが、カゼを早く治すわけではない。
- インフルエンザ:タミフルは、平均7日症状が出るのを平均6日間にするだけだし、個人個人に対する効果は不明確。インフルエンザワクチンの効果は、10%の人がなる状況でそれを7%に減らすくらいの効果。
- 腰痛:ガンによるものなど危険な腰痛を見逃さないことが第一。問診前にレントゲンを撮るのはナンセンス。4つの問診でほとんどガンによる腰痛は除外できるが、レントゲンでは40%見逃される。レントゲンは被爆も心配。エビデンスでは、安静はなんと有害。
- 花粉症:副腎皮質ホルモンの副作用はよく取り上げられるが、盲点は、抗ヒスタミン薬の副作用で、眠気の他、飲み合わせによっては、不整脈の増加も報告されている。
- アトピー性皮膚炎:時間の経過とともに良くなるものが大部分。放っておいて治ることが多いので、治療効果については厳しく考える必要がある。ステロイドの効果の研究は長くても数週間から数ヶ月のみ、年にわたる長期の効果についてはまったくわかっていない。
- 剃毛:剃毛をすると、感染しやすい。剃毛:5.6%、脱毛クリーム:0.6%、何もしない:0.6%
- ガン検診:個人のガンは予防できるか分からないが、全体のガン死亡の減少は保証。ガン検診を受けないで、完全に胃のある状態で5年長く暮らしているほうがより良い人生かもしれない。レントゲンの被爆量でガンが増える可能性もある。一般対象の乳がん検診の効果についてのはっきりしたエビデンスは今のところないのではないか。早期の肺がんが見つかりながら「いいよ俺は。別にこのままで」と治療を受けずに、数年後脳転移。死ぬのが自然なことと受け入れていたのかもしれない。
- うつ病:日本では、20~44歳の死亡原因のトップが自殺。心筋梗塞は米英の1/5だが、自殺は2~3倍。高齢化と関係なく増えている唯一の病気。抗うつ薬は、症状はおさえるが、自殺予防の効果ははっきりしていない。自殺を減らすという明確な結果を示した研究はない。
以下が、EBMのステップだそうだ。
- 患者さんの問題を明らかにする
- 問題について情報収集する
- 情報を批判的に吟味する
- 情報を患者さんに適用する
- 以上のプロセスを評価、反省して次につなげる
- 気分の落ち込み(とくに朝)
- 日々の活動のなかで、興味や楽しみの喪失
- 体重の減少または増加
- 不眠もしくは過眠
- 落ち着きの欠如・動作緩慢
- 疲労感・気力の減退
- 無価値観・罪悪感
- 集中力・決断力低下
- 希死念虜・自殺企画
おまけのおまけ、ガンによる疼痛を除外する6つの質問
- 50歳以上ですか?
- これまでガンにかかったことはありますか?
- 体重が減っていますか?
- 1ヶ月治療しても良くなっていませんか?
- 安静で良くなりませんか?
- 1ヶ月以上続いていますか?
1.から4.のうち、すべて「いいえ」なら、ガンによる腰痛の可能性はほとんどない