応急処置と慢性期簡略処置のまとめ
3月の10人通し稽古用に「応急処置と慢性期簡略処置のまとめ」を術伝MLに送った。
内容は以下の通り。10人通し稽古に挑戦される方は、この方法で一人20分10人連続の施術に挑戦する。挑戦されるみなさんが無事達成されますように。
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「鍼は引き鍼」改訂版原稿
【6】応用
[6-10] 応急処置、慢性期の簡略処置のまとめ
・・・一人20分10人通しのために
(C)2007 愉愈庵遊風
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(1)応急処置の基本
応急処置の基本は、「遠くに強く引く」事です。患部が頭首胴の場合には、「遠く」として手足末端、特に手足甲が使われます。患部が手足末端の場合には、「遠く」として左右上下対角の対称点が使われ、左右は「巨刺」として有名です。
慢性期でも時間が無い場合に簡略処置をする時には、これに準じたやり方で行います。
(2)運動器系応急処置の手順
(2-0)運動器系応急処置の基本手順
1.手足の甲への引き鍼(+運動鍼)
2.患部の基本刺鍼
3.患部の動作鍼
4.後始末
-1.頭散鍼(陽のみの時は省略)
-2.手足甲への引き鍼
最初の手足甲への引き鍼は、患部が横隔膜よりも上の場合は手甲、下の場合には足甲が使われる事が多いです。最後の手足甲への引き鍼も最初に準じますが、陰経や陰位に刺鍼し頭散鍼した場合には、手甲が使います。
(2-1)辛い箇所別の刺鍼
辛い箇所別の刺鍼は、ツボが出やすい場所の基本刺鍼と、動作鍼が主になります。
腰痛では、基本刺鍼は、腰から尻、膝裏から脹ら脛。運動鍼は、捻転制限と前屈制限が中心で、捻転制限では腰椎3の横輪切りライン、前屈制限では足太陽にツボが出ます。
肩痛では、基本刺鍼は、首から肩、肩甲骨の周り、脇の下周りです。動作鍼は、挙上制限では脇の下〜上腕陰経や肩甲骨周り、捻転制限では肩峰〜胸と肩峰〜背中にツボが出ます。
膝痛の基本鍼は、膝裏から脹ら脛です動作鍼は、正座不可が中心で、膝裏から足首方向と臀部方向、膝皿周りから足首方向と腹方向にツボが出ます。
肘痛の基本刺鍼は、肘の手の平側で、肘から2〜5cm位の範囲です。動作鍼は、屈曲制限では手陽経、伸展制限では手陰経、捻転制限では前腕の太い処が主です。肘先の骨上が痛い場合には、腱の筋腹にツボが出ます。
手首足首から先の辛さには、巨刺、上下刺、対角刺が効果的です。対角刺から始め、上下刺、巨刺の順で患部に近づけていきます。
指周りや手の平、足の裏など鍼が刺しにくい処のの辛さには、灸、硬く細く捻った糸状の直接灸が効きます。最初に井穴や指端に糸状灸し、それから動作鍼のように動かして痛いところを見付け糸状灸をし、痛い所がなくなったら、仕上げに再度井穴や指端に糸状灸をします。
詳しくは、「運動器系応急処置」や「運動器系慢性期の処置のまとめ」を参照してください。
(3)内科系応急処置の手順
内科系応急処置の手順は、以下の通りです。内科系急性期には、邪気が頭に突き上げる上衝が見られる場合が多いので、手早い刺鍼が大切です。手早く邪気を手足末端や、陽位である背中側に引き、頭や表位に突き上げた邪気は散鍼して散らします。
1.手甲に引く
2.手陰経.手首付近に引く
3.足に陰経、陽経の順に引く
4.背中に引く
5.肩頚頭の散鍼
6.手甲に引く
最初の手足甲への引き鍼は、頭の熱い処と経絡的な関係を考えツボを選びます。急性症状なので、頭に邪が衝く上衝がある事が多く、陽経側から始めるわけです。
手陰経.手首付近は、患部が表や呼吸器系なら列缺、それ以外なら内関を使う事が多く、不整脈など心臓系の場合は左の陰げきを使います。
足への引き鍼は、主に足首から先が使われ、腹の邪との経絡的関係を考えてツボを選びます。
背中への引き鍼は、腹の邪との横輪切り相関で考えますが、背を丸めて耐えている場合には、その曲がり目、一番で出っ張った辺りにツボが出ています。
上衝で表位の肩頚頭も熱い事が多いので散鍼します。
最後の手甲への引き鍼は八邪などを調べ、出ているツボに引きます。
(4)慢性期の簡略処置の手順
慢性期の患者さんに対しても時間が無い事もあります。そう言う場合の簡略処置の基本は、腹への刺鍼を省略する事です。省略しても、腹診して腹に出ているツボを見付けた時に少し強めに押して置けば、経絡的に関係する手足のツボに刺鍼した時に、その腹のツボに響きやすく、腹のツボも変わります。手順は以下の通りです。
0.腹診
1.手に陰経、陽経の順で引く
2.足に陰経、陽経の順で引く
3.背中に引く
4.肩頚に刺鍼
5.頭に散鍼し手甲に引く
慢性期は上衝がない事が多いので、ても陰経、陽経の順です。手は、表位上衝の邪との経絡的関係を考えてツボを選びますが、慢性期なので肘付近に多いです。足は中焦下焦の者との関係を考えてツボを選びますが、慢性期なので膝付近が多くなります。背中に引くのは省略しても良いです。陰経に刺すと邪が動いて肩頚が悪化する事もあるので肩頚は出来るだけ刺鍼します。熱い場合には散鍼してから。最後に後始末として頭の熱い処に散鍼してから手甲に引きます。