遊風の養生日記Ⅱ

術伝流の愉癒庵遊風(颶風颯雷電)が、鍼灸操体食養はじめ養生について書いていきます

『定本お血という病気』(「お」は、病ダレに於)

定本 〓血という病気

定本 〓血という病気

 オ血を中心に漢方治療している医師の本。


 アトピー性皮膚炎、高血圧、頭痛、耳鳴り・めまい、冷え症、肥満・やせ、腰痛・座骨神経痛、膝関節症、リウマチ、胃潰瘍、胆石症、花粉症・アレルギー性鼻炎、無症候性血尿、ネフローゼ症候群などの症例をあげている。

  1. めまいは、耳後部の首筋の筋肉の強張りによって、脳へ血液を送っている椎骨動脈が押しつぶされて、脳や内耳で循環不全をおこしているからだと言う。(このあたりは、操体橋本敬三先生の説と同じ)
  2. ぎっくり腰などの急性の腰痛は、固まっていた腰の筋肉を突然引き伸ばしたことによる腰の筋肉の細かい断裂によってできた内出血が原因なので、「治打撲一方」で改善する
  3. リウマチは、漢方薬治療をすると、一時的に痛みが憎悪するが、その時期(症例では2ヶ月)をすぎると、痛みも減って消えていく。

 お血という病気の漢方治療についての解説でおもしろかったところ、気になったのは以下の点

  1. 血液は心臓から送り出されて戻ってくるのにおよそ26秒。
  2. お血によって、微小梗塞ができ細胞が破壊されていくが、ほとんどの人で共通して細胞破壊がおこるのが筋肉組織。
  3. お血の人が欧米に行くと症状が出なくなることが多い。年間の気圧変動などの少なさが原因。逆に、日本でオ血の患者さんの症状が悪化するのは、気圧変動の激しい時期。
  4. 脳外科医だった筆者がはじめて漢方薬を処方したのは、鞭打ちの患者さんに桂枝ぶくりょう丸。オ血圧痛点に圧痛があったから。以後、診察に腹診を加え、様々な患者さんにお血圧痛点に反応を見いだし、駆悪血薬で、患者さんの自覚症状を改善した。
  5. 現在の漢方医学は昭和初期ににわかに作られた昭和漢方で、それに絶望し江戸時代の漢方を書籍を勉強したが、口伝の壁にあたった。口伝は、「万病は、オ血より生じる。しからば全ての病を治すに当たって、まずオ血を治することより始めよ」だったのではないかと考えている。(吉益東洞の「万病一毒」を思い出したが、私(遊風)は、「オ血」のところを「オ血と水毒」にしたほうが、より一般的なのではないかなと思った)
  6. 正常の場合、赤血球の表面はマイナスに荷電しているので、反発し合っている。オ血という病気では、プラスに荷電した赤血球が増えていく。
  7. オ血を悪化させる食品は、油脂と砂糖類。とくに、結晶化した糖類。
  8. 血管が直角に分岐するあたりは、オ血による症状が出やすい。例:歯槽膿漏(下歯槽動脈)、頭痛・めまい・耳鳴り(脳底動脈)、肩こり、腰痛
  9. 冷え症は、発熱臓器である肝臓のオ血による循環障害も関係している
  10. オ血による微小梗塞は、人によりいろいろなところに出る。例:皮膚組織(アトピー性皮膚炎)、気管支・鼻腔粘膜(花粉症・気管支ぜんそく)、骨・関節(関節リウマチ)、膵臓(慢性膵炎)、脳の前頭前野内側部(ひきこもり、固執、キレる)


 オ血の診断

  1. 舌診:舌下動脈の怒張
  2. 腹診:6カ所のオ血圧痛点:臍斜め60°2cm位上の左右、臍斜め45°3cm位下&10cm位下の左右。(臍のまわりの4点が臍の上下で少し位置が違うのがおもしろいなと思った)
  3. 血液粘稠度
  4. MC-FAN


 治療

  1. 食事指導:全ての肉、油脂、糖類を断つ。先ずは2週間。糖類は科学的に抽出して添加したもの、ご飯芋に含まれるものは良い。魚介も可。(幕内秀夫先生、川島四郎先生の和食の勧めと同じだなと思った)
  2. 漢方薬:虚実に応じて処方。虚実の診断は、上腹角。20°以下:四物湯、20°〜60°:当帰芍薬散、60°以上:桂枝ぶくりょう丸・桃核承気湯・通導散
  3. 上腹角による虚実は生まれつきのものなので、そのときの虚実を脈診で微調整。(腹診が主で脈診で微調整というのは私と同じなので納得)
  4. 腹部6カ所なら、3回/日。圧痛点の現象に応じて2回/日、1回/日と減らしていく
  5. エキス顆粒は、湯に溶かして服用


 角質水分量の違いによって、冬型の皮膚と夏型の皮膚があり、その状態を季節に合わせていけないと、冬の冷え症や夏の熱中症が酷くなったりしやすいとのこと。


 全体の感想として

  1. 慢性症状には、悪血と水毒が関係し、急性症状は、それら邪毒から発生する邪気が関係するという見方をしている私には、理解しやすかった。悪血だけでなく水毒も見たほうがよいと思う反面、悪血による微小梗塞で抹消循環が悪くなれば水毒の発生停滞もおこりえるので、この考え方にも一理あるかなと思った。
  2. 女子医の漢方医の方から外傷性悪血証が脳梗塞の一因と言われ桂枝ぶくりょう丸を勧められ、古傷の痛みや冷え症なども改善した経験があり、私程度の怪我で外傷性悪血証になるなら、ほとんどの方にその可能性もあるなとも思っていたので、納得しやすかった面もあるかもしれない。
  3. 私は、臍の斜め45°下方2cm位と、腰骨の腹側の五枢〜維道あたりの左右4カ所で悪血かどうか見ていたが、これからは筆者の圧痛点も参考にしていこうかなと思った。