『認められぬ病』
- 作者: 柳澤桂子
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1998/02/01
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 26回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
自然科学者としての一貫した態度がすごいなと思った。
「医学的にありえないということが診断の理由になることに驚いた。
同じ科学を志すものであるが、私は常に全く逆の立場をとってきた。目の前に起こっている現象に対して、人間の尺度での判断をできるかぎり排除して、自然と謙虚に対すること。そこから科学ははじまるものであると考えていた。すべてのことは起こりえるものとして、よく観察すること。これが科学の鉄則であると信じてきた。
私のこれまで生きてきた世界では、討論の自由が保証されていた。自分お正しいと思うことは主張できたし、わからないことはいくらでも質問できた。討論の自由を奪われることは私にとっては精神的暴力と感じられた。」
「私は自分が動けなくなって、病むことの最大の苦しみは、人のために何かをしてあげることができなくなることであると気づいた。いいかえれば、人間の最大の喜びは人のために何かをすることである。自分自身のために何かを求めても、その良級は際限なく増大するばかりで、けっして満足は得られない。人のために何かをすることによってはじめて、こころを満たすことができる。
このように考えると、人の助けを必要とする弱者は、人々に真の喜びをあたえうる存在であることがわかる。」