遊風の養生日記Ⅱ

術伝流の愉癒庵遊風(颶風颯雷電)が、鍼灸操体食養はじめ養生について書いていきます

足首捻挫の後遺症

 右足の内くるぶしあたりから親指にかけて右足内側横側面に、抜歯時の麻酔注射のあとのようなシビレ感(感覚異常)が続いているという方。麻痺して感覚がまるでないわけでもなく、動かせないわけでもなく自由に動かせるとのこと。
 通し稽古が午前中に終えたので、午後に残っていただいて施術させてもらった。
 なってから9ヶ月で、筋痛症治療で有名な石川の加茂先生のところに2回通い、近所のTP鍼のところや麻布のTP注射にもかよっているが、改善が思わしくないということ。
 局所のみの異常かどうか分からないので、まずは、仰向けで、全身診察させてもらう。脈は、実でしっかりうって元気そう、ただし体格に比べ少し細めの感じ。舌裏側の血管が両側ともどす黒く、瘀血証の感じ。上腹部、とくに左側が堅く、水毒もありそう。へそ周りも左側、鼠径部も左側が堅い。
 患部が足太陰脾経なので、大腿の足太陰脾経の左右差を見てみると、大腿部も左側にツボが出ていた。下腿の足太陰脾経の左右差をみていくと、右側の脹ら脛が終わる辺りの漏谷付近にツボが出ていた。そして、このあたりから先は、右側にツボが出ていた(また、下腿までは、それほど冷えていないのに足首から先は非常に冷えていた)。
 腰椎や坐骨神経などに関係しているなら、こういうツボの出方や冷えの出方は変だなと思った。出ていたツボを患者さんにも確認してもらい、右足のケガか何かなかったか聞いたら、右足首捻挫を繰返したとのこと。その後遺症の可能性があるなと思った。
 施術は、経過が長いので、慢性期と考え、養生の型で、左手陰陽、左横腹の順で刺鍼し、左鼠径部は打鍼、へそ周り、左上腹部、左大腿の順で刺鍼。
 それから、右に移って、漏谷あたり。ここは1cmくらいの太い筋張りになっていたので、2ヶ所ほど刺鍼して筋張りをなくした。
 足首近くの大谿あたりに出ていたツボに刺鍼したら、古そうな邪気が出てきたし、捻挫の後遺症なら瘀血の滞留もあるかなと思い、置鍼し、釜屋の墨モグサ温暖で灸頭鍼をした。内くるぶし前方の商丘あたりも凹んでいてツボが出ていて、刺鍼したらそこも古そうな邪気を感じたので、置鍼し灸頭鍼。公孫あたりも大きく凹んでツボが出ていたので、刺鍼したら大量の邪気が出てきたので、置鍼し灸頭鍼。公孫あたりの灸頭鍼は、しばらく震えていたので、邪気が出ていっているのかなと思った。 出口を末端に作りたかったので、隠白に置鍼し、時々打鍼用金属棒で弾鍼した。公孫あたりの灸頭鍼は、はじめセイリンのラック灸でしたが、たりなそうなので、釜屋温暖を追加した。患者さんが熱さを感じたそうなので、紙を挟んで熱さの調整をしたりしながら、燃え尽きるまで待った。
 終えるころには、なぜか先に刺鍼した漏谷付近も赤くなり、しかも直径2mmほどのブツブツが数個出てきた。灸頭鍼を取り去ってみると、大谿、商丘、公孫あたりも似たような感じだった。それと、内くるぶしから土踏まずにかけて、イトミミズのような細絡が目立つようになった。奥の瘀血が動いたかなと思った。
 患部の感じを聞いたら、改善したということで、表情も晴れ晴れとした笑顔になった。良かったなと思った。座位になってもらい、頭の足厥陰〜足太陰の関連箇所に出ていたツボ2つに刺鍼したあと、頭の熱いところに散鍼し、手甲への引き鍼で仕上げた。
 自分と同じ、打撲捻挫の後遺症としての感覚異常だったので、分かりやすかった。下腿の脹ら脛の終わるあたりから先だけ右にツボが出ていたのに気づいて、ケガか何かしたかという質問ができたことが、改善へのキッカケだったように思った。このような訴えや線維筋痛症などの患者さんには、打撲捻挫したかや手術歴などを聞く必要をあらためて感じた。よい経験をさせてもらい、勉強になった。