『鎮守の森』
- 作者: 宮脇昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/04/25
- メディア: 文庫
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とくに、おもしろかったのは、以下。
- その土地本来の森であれば、火事にも地震にも台風にも耐えて生き延びる
- 「書いてあるのは引き写しや又聞きかもしれないから、まずは、見ろ、この大地を。現場に出て、自分の身体を測定器にして、自然を目で見、手で触れ、匂いをかぎ、なめて、触って調べろ」ドイツの師匠チュクセン教授の言葉。
- 「コンピュータにインプットできない見えないものを見ようと努力し、研究し、書き残せ。それが人類に最後に残された英知」同じくドイツの師匠チュクセン教授の言葉。
- 森が、草原水辺などと接するところは、ツル植物や低木などの林縁群落(マント群落)で囲まれ、さらにその外縁は、草本植物で縁取りされ(ソデ群落)、森が直接異環境にふれないように守られている
- 日本の本来の自然植生は、鎮守の森にいちばんよく残っている
- 日本の自然植生の主役は、照葉樹林域ではシイ、タブノキ、カシ類、夏緑広葉樹林帯ではブナ、ミズナラ、カエデ類などの高木種。
- 脇役も取り間違えない、照葉樹林帯では、亜高木のシロダモ、ヤブツバキ、モチノキ、ヤマモモ、ネズミモチなど、低木のアオキ、ヤツデ、ヒサカキなどをできるだけ多くの種類混植密植。また、縁には、林縁群落として、マント群落、ソデ群落の構成種群を細い帯状に植える。
- その土地の本来の自然植生に基づいて森作りをする(本来の樹種の数十cmの苗を混成蜜植)と、3年程度は、帰化植物の雑草取りなど人手をかけて管理する必要があるが、それ以降は管理の必要がなくなり安定する。
- 本来の自然植生に基づかないと、ずーと管理が必要だし、災害にも弱い。用材用の杉林やカラマツ林、薪炭柴用の里山の雑木林は、人の手が入らなくなるとジャングル状に荒れてしまうし、火事にも地震にも台風にも弱い。
- 自然な森が破壊されると、多種多様な植物がはいってきてジャングル状になり、持続しないし、安定もしないが、鎮守の森は、最もダイナミックに安定した森社会。
- 全ての敵に打ち勝ち全ての欲望が満足できる最高条件というのは、むしろ危険な状態。生態的な最適条件というのは、生理的な欲望をすべて満足できない、少し厳しい、少し我慢を強要される状態であることを、長い命の歴史は教えている。
- イオングループは1990から店舗のまわりの森作りをしていて(07年3月現在578店舗636万本)、その植樹祭には毎回予想以上の方が参加している
- 「鎮守の森」をドイツのシューワーベ博士が国際語にしようと1974年に提案し、今や国際語になっている
- 曹洞宗の大本山である横浜の總持寺の大貫首の板橋興宗禅師は、お寺には「森閑」「凛とした」雰囲気がいると思い、宮脇先生の提案を受け入れ「千年の森」作りをはじめた。
- 「氏神の森にカミが宿っているという信仰が日本人にはある。明治以降の神道ではない、古代から続くカミへの信仰。日本には、本来の仏教は無く、日本宗があるだけ。」板橋禅師。
- 帰化植物は、鎮守の森には歯が立たなかった。キリスト教などが韓国に比べて定着しないのも、鎮守の森にカミが宿るという信仰が残っているから。(宮脇先生&板橋禅師)
- 3つの選択枝しか残されていない。一つ、昔は良かったと後戻り。現代人には戦前の生活はできないから無理。二つ、今のままで充分じゃないかと立ち止まる。バランスのない2輪車のように倒れてしまう。倒れないためには進むしかない。だから、3つめは、緩やかに成長発展し続けること。ハードからソフトへ重点を移しながら。
- 一神教が2000年で地球をダメにした。唯一神や人間が中心だったから、他の生き物や自然環境は征服し利用するためのものだった。鎮守の森の信仰は、自然との共存思想。仏教の衆生は、生きとし生けるもの全て。