遊風の養生日記Ⅱ

術伝流の愉癒庵遊風(颶風颯雷電)が、鍼灸操体食養はじめ養生について書いていきます

左腕の激痛(線維筋痛症の発症時に似ている!?)

経過:
 3月12日「左腕激痛の為、救急車で運ばれそのまま入院。多分頚椎ヘルニア。痛みで一睡もできなかった。」とのメールがはいる。
 結局、7日間入院して牽引と鎮痛剤だけだったそう。
 後頚部や、左肩や、左肩甲骨まわりに怠さ・鈍痛が残り、鎮痛剤を飲んで自宅療養。
 4月5日に講座に来る途中も数回激痛が出て、2時間ほど遅れて会場に到着。


簡単に解説:

  1. 通常の頸肩腕、腿の痛みとは考えられないほどの激痛を訴える方が増えている。腕の場合は、首肩も痛むが、腕の痛み・シビレのほうが酷いことが多く、モノが持てなくなることも多い。
  2. 線維筋痛症の発症時に似ているが、手足どれか1本だけのことが多い。
  3. 90年代後半から見られるようになり、21世紀にはいり毎年増えている。
  4. 原因不明で治療法がなく、たらい回しになることが多い。左腕の場合には、心臓系の疾患を疑われることも多いが検査しても異常が見られない。
  5. 全身に痛みが出るようになると、線維筋痛症と診断されるようだ。
  6. 水毒の影響が疑われる腹証・背部症候が見られる(とくに腕の場合)。腹証は、患側の胸脇苦満、心下痞。背部は、患側の脊椎7~11の華陀経、痞根にツボが出る。腿の場合は、患側の悪血証の場合もあり、この場合のツボは、普通の小腹急結よりも外よりの鼠蹊部(五枢〜維道、居りょう)、仙骨まわり、腰徹腹に出やすい。
  7. 腕の場合は、患側の脇の下から上腕手ひら側に邪気がたまっていることが多い。(腿の場合には、大腿内側)
  8. 初めての発症は、運動した直後、手術出産などの後などに多い。
  9. 上腹部の水毒から発生した邪気が脇の下〜上腕陰経などに溜まり、感覚神経に不正なインパルスを発生させているような感じを受ける。邪気は、生体内雑電気なのかな?運動時の骨格筋の活動電位がきっかけの可能性は?
  10. 治療法は、運動器系の応急処置に、水毒を減らす慢性期の処置を組み合わせる。
  11. 食養としては水毒を減らす小豆など。添加物・精製物を減らしたほうがよい感じ。(水毒を減らす漢方薬を併用したほうが治りやすいと思うのだが)
  12. 添加物・精製物の多い食事と、パソコン・携帯の使用が影響しているのではないか?と思う。パソコンや携帯を使う方が多くなってから、こういう症状を訴える方が多くなってきたように思うので。



診察と治療:
 腹診をしたかったので、仰向けになれないか頼む。きついのか時間をかけて仰向けになった。案の定、左胸脇苦満と心下痞。肋骨下部を左右交互に押してみると、左側だけ何か詰まっている感じで押せない。また、腹側から肋骨下縁に指を入れようとしてもはいらない。左上腹部が硬い。臍の左上2cmくらいにツボ(左上肓愈と仮称している)。


 背中側胸椎7〜8の左華陀経に径2cmくらいがズブズブにへこんだ(虚した)ツボが出ていた。左痞根が板のように硬くなっていた。ここまで慢性期の型で治療。
 それから、座位で運動器系応急処置。まず、手甲に引き鍼しながら運動鍼。首の真後ろの下から1/3のところにツボ。前にむちうちをしたことがあるというので、その名残かなと思う。その横から首の付け根にかけて華陀経にツボが出ていた。

 脇の下から上腕陰経は、親指側(手太陰)と小指側(手少陰)にツボが出ていた。真ん中(手厥陰)には出ていなかった。ここは、寝てもらって刺鍼。
 そのあと、座位で、首腕を動かしてもらい辛さが残っているところに刺鍼。
 辛さがなくなったので、頭に散鍼してから手甲に引き鍼して仕上げ。
 終了後に具合を聞いたら、すっきりよくなったということで、そのまま、午後の操体講座に参加。


予後:
 次の日に「来た時あんなに辛かった後頚部と左肩があんなにスッキリと痛みが取れたので本当にびっくりしています!あの痛みは『左腹の水毒が悪さをしていた為』だったとは……水毒恐るべし……ですね!そして『鍼ってすごいなー』と改めて実感致しました。 いや〜左腕が軽い♪」というメールが来た。


 写真もたくさん撮ってもらったので、詳しくは、そのうち「あはきワールド」の「術伝流一本鍼」に掲載する予定。
(「あはきワールド」2009年9月9日号に掲載:090909追記)